地域CL2017観戦記(5日目=決勝ラウンド最終日)

皆さんこんばんは。@regionalfootbalです。

今日は2017年11月26日(日)、地域CL2017 決勝ラウンドの3日目最終日です。昨日までの2日間でJFL昇格を決めたチームは出ませんでした。よって、最終日の今日ですべてが決まることになりました。

会場はこれまでどおりゼットエーオリプリスタジアムですが、今日は冷たい風が強く吹いていて、これがゲームに大きな影響を及ぼすことになりました。

さあ、「最終節」の最終日。行きましょう。

第1試合:コバルトーレ女川 対 アミティエSC京都

小気味いいパスワークの女川と、縦への速さとプレスを敢行するアミティエ。

前半風上に立ったアミティエは、昨日と同じく前線の長身FW22番脇選手に長いボールを入れるシーンが多かったです。また、中盤でもプレスを仕掛けて女川のパスワークを出させません。対する女川も、何度かいい位置でFKを得ますがゴールにまで迫れません。相手のプレスを回避しようとして長いボールを蹴るも、向かい風で押し返されることもしばしば。これまで中盤でのパスワークの中心にいた7番小川選手をこの試合では出場停止で欠いていたこともあってか、見ていてちょっと打つ手がないかな、という感じがしました。これが意図してのことなのかどうかはわかりませんが。

ただ、上のツイートでも書いたとおり、アミティエとしてはとにかく点を入れて90分で勝たなければならず、その意味では風上をとった前半のうちに無得点だったことはあとに響いたかもしれません。

エンドチェンジして風上に立った後半の女川は、ギアを上げて前への圧力を上げたように見えました。これは後半勝負なのか、と思った矢先に、2枚目のイエローをもらっての退場者を出してしまいます。これで試合の潮目が変わったか、徐々にアミティエのペースへ。女川のお株を奪うようにパスで組み立てて女川ゴールに迫ります。何度か良いシュートもありますが枠へ飛ばず。

この時、昨日の第2試合、宮崎対アミティエの試合が頭をよぎりました。

「うーん、アミティエはこういういい流れの時に点を取れないと…」などと思っていると、宮崎は距離の長いFKをゴール前に入れてこれが混戦となったところを押し込んで同点!(中略)一方のアミティエは、後半に点を取り切れなかったことのツケを最悪の形で払うことになってしまいました。

アミティエが主導権を握ったまま、時間だけが過ぎていきます。一見有利なようでも、このまま進めばアミティエに待っているのは昨日と同じ、柵のない崖だけです。そして女川が前線のFWを交代して数分後、セットプレーからの流れで低いシュートを打ち込んでゴール!押されていた女川が先制!ただでさえ人数が多くにぎやかだった女川サポのボルテージが、より一層上がります。

これで2点が必要となったアミティエも必死に反撃を試みますが届かず、1-0のまま女川が逃げ切りました。

この結果、コバルトーレ女川が、JFL昇格の権利を得ることになりました!

今日の女川側のバクスタには女川町の町長さんや公式ゆるキャラのシーパルちゃんも訪れていて、また子ども連れの皆さんも多く、試合後は歓喜と涙が溢れていました。そして、「やったー!」という声ももちろんありましたが、同時に「よかったねー!」という声を多く聞いたように思えます。これは、これまで2日続けて心臓に悪いPK戦をくぐり抜けてきたことや、この関東の会場まで来られなかった地元の皆さんのこと、そしてなにより、地元で働きながらこれまでサッカーを続けてきたコバルトーレの選手たちのことを思って出てきた言葉なのかな、と思いました。そりゃね、もらい泣きもしますよ…

コバルトーレ女川に関わるすべての皆さん、改めまして、おめでとうございます!

そして関西王者のアミティエSC京都に関わるすべての皆さん、残念でした。縦への速い速攻と強度の高いプレスは、とても魅力的でした。

試合後、歓喜に沸く女川の選手たちとサポさんたち、そして彼らを撮影するメディアの人たちの向こう側に、試合相手側へのあいさつに来て整列し、静かに礼をしていったアミティエの選手/関係者の皆さんたちを見ました。状況が状況なだけに、その場でそれに気づいた人は多くはなかったかもしれません。悔しかったでしょうに、立派でした。せめても、と思って拍手をしておきました。昨日もツイートしましたが、十二分に誇れる選手たちです。胸を張って帰ってください。お疲れ様でした!

第2試合:テゲバジャーロ宮崎 対 VONDS市原FC

地元市原の最終戦、ようやくバックスタンドが緑に染まってくれたようですね(公式発表も3,750人)。バクスタほぼ中央にいたのですが、VONDSのユースやジュニアユースらしい子たち、またその親御さんやご友人などでかなり混雑していました。

そして、選手を描いたノボリだけが会場で目立っていた宮崎ですが、今日はバクスタ側に数は少ないながらもサポさんたちが集まっていて、試合中にも声を出されていました。実は昨日の2日目の試合の時にも、バクスタ側からの声はときおり聞こえてはいたのですが、今日は対戦相手が地元市原の大声援だったにも関わらず、試合を通してちゃんと声が聞こえていました。昨日(2日目)の朝に、何の気なしに

というようなことをツイートしていたので、これはちょっと(勝手ですが)嬉しかったです。

そして、宮崎の石崎監督、そして市原のゼムノビッチ監督、という元Jクラブ指揮官同士の対戦でもありますね。

先に風上を取ったのは市原。前線の森島選手にボールを入れたい宮崎ですが、高いボールはこの試合でもかなり風に押し戻されていてあまりうまくいかず。対する市原のレナチーニョは今日もトップではなくて中盤でゲームメイクをしていて、これが機能したのか前半から市原が押し込んでいきます。宮崎陣内でのFKも多くシュートもけっこう打ちますが、宮崎のキーパー石井選手が好守を連発して前半を無失点に抑えます。

第1試合のアミティエと同様、90分勝ちしか道がない市原も、同じく風上に立ったのに前半無得点。ただ、後半は大歓声の市原サポの側が宮崎ゴールになるので、得点できれば一気に火がつくでしょう。

そして後半も、市原が主導権を握って攻め続けます。左右をえぐり、クロスを入れ、ミドルを打ち…、しかしいくらトライしても宮崎のゴールネットを揺らすことができません。しばらくして後半途中で気づいたのですが、後半の宮崎は前半ほどには自陣でFKを与えておらず、それは宮崎側がファウルせずに粘り強く守備していることを意味しており、それが市原からみての効果的なチャンスを防いでいたのかもしれません。

上のようなことを考えていたまさにその時に、ほとんど押されっぱなしだった宮崎の速攻から、クロスへのバックヘッドが決まって、なんと宮崎が先制!このときは、宮崎にとっての追い風がいいように作用したかもしれません。またしても炸裂した、宮崎の「ここぞ」という一発の精度。

その後も、市原が攻め、宮崎が守る状況のまま、ジリジリと時間が経っていき、市原サポの声に焦燥感が混じっていきます。そして、後半終了間際に市原がPKを獲得!これをキャプテンの24番藤本選手がきっちり決めて同点に!

追い上げた。時間はあと数分+アディショナルタイムだが、必要なのはたったの1点。しかも会場はホーム、緑色の大歓声。舞台は整った、ように思えました。

予想通り、市原側のバクスタがよりいっそうボリュームを上げていきます。それに答えるように、その後も市原はチャンスは作ります、バックヘッド、ミドル…。そのたびに市原側のバクスタは声をからして叫び、天に祈る。

これまで今年一年、地域リーグの試合をけっこう現地観戦してきました。関東リーグ、全社、そして地域CL。そのなかでも、おそらくこの瞬間が応援席のボルテージとしてはもっとも高かったと思います。一年間のまさに最後の試合、来年以降のクラブの行く末を決めるための、最後の数分間。

しかし、宮崎もそれを跳ね返し、前線では森島選手をはじめとしてボールキープで時間を稼いで、やがてタイムアップを迎えました。倒れ込む市原の選手たちと、静まり返る市原バクスタ。

スコアは1-1。ルール上はこの後にPK戦がありますが、この時点で、テゲバジャーロ宮崎がJFL昇格の権利を得ることが確定しました。

その後のPK戦は、サドンデスまでもつれ込みましたが、結果8-7で宮崎が勝利。きっちり最後を締めました。

上のツイートの写真は宮崎側のバクスタのものですが、市原の敗退のしかたがあまりに色濃かったのでそちらを中心に本文を書いてしまい、写真と内容があわなくなってしまいました。申し訳ありません。

テゲバジャーロ宮崎に関わるすべての皆さん、改めまして、おめでとうございます!

これで、石崎監督が昇格させたクラブはいったいいくつ目なのでしょうか。本当に凄いですね。そして、人数では市原側に圧倒されながらも声を出し続けていた宮崎サポの皆さん、お疲れ様でした!若い女性が数名いらして、試合後の市原サポからのテゲバジャーロコールを聞いて「うれしい〜」と喜んでいたのが印象的でした。

そして、関東王者のVONDS市原FCに関わるすべての皆さん、残念でした。この市原の結果が、地域CLの難しさをして、「世界一過酷な大会」などと呼ばせているものなのかもしれません。全社をまるごと準備大会と割り切り、1次ラウンドでは3連勝してライバルを沈めてきた市原がいちばん重要な試合で負ける原因は、僕になどわかろうはずもありません。

僕の中では、今年一年かけて観てきたチームの中で、一番したたかなチームでした。Jリーグで言えば、鹿島アントラーズをちょっと思い起こさせるような、他のクラブから揶揄されるほどの強さ。その強さを、また来年以降も見せてください。お疲れ様でした!

最終成績

  • 優勝:コバルトーレ女川 (勝ち点7)
  • 準優勝:テゲバジャーロ宮崎 (勝ち点6)
  • 3位:VONDS市原FC (勝ち点3)
  • 4位:アミティエSC京都 (勝ち点2)

感想:サッカークラブとともに

ええ、まだ消化できていませんが、ここらで締めとしましょう。

かくして、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2017は幕を閉じました。

今年6月にこのサイト「地域CLを知る」を始めた時には、こんな結末を迎えるとは想像もしていませんでした。

「5部リーグから4部リーグに上がるための大会」。関係者以外の普通の人にとってはそれは、「え?なにそれ」という感じのものでしかないでしょう。

今日の朝に、サッカークラブの価値に関して、こんなことを考えていました(ちょっと尻切れトンボ状態ですが…)。

(上のような文献をご存じの方はぜひご教示ください)

今日まで勝ち残った4チームだけじゃない、また地域リーグだけでもない。日本には、そもそもJリーグやJFL、都道府県リーグや女子のチーム、大学リーグや高校生などの各育成年代のチームなど無数のサッカークラブがあって、そのそれぞれに役割、というか存在する意味みたいなものがあるはずで、それを巡って関係者の皆さんが毎週末ごとにサッカーに関わっている、と。

今年一年、各大会を敗れ去っていくチームの選手やサポさんたちの姿を多く目にしてきました。歓喜よりも、悲しみのほうがあきらかに多かったです。道半ばなこともあるかもしれない、時には不調なときやどん底と思えるときもあるかもしれない。しかし、そんな時だからこそ、「たかが球蹴り」に各人が本気になって取り組み、挑戦し続けることでその意味を見出し、クラブやチームや人を形づくっていく。その繰り返しや右往左往そのものが、やがてクラブの歴史になっていき、その地域での居場所が見えてくる。そういうものなのかもしれないと、1次ラウンドが終わったときにもツイートしましたが、改めて思います。

しかし、僕が今年一年でみてきたものも、地域サッカーのごくごく一部の側面でしかありません。一部を見ただけで全体を理解したように思ってしまうのは愚かなことです。これまで僕が書いてきたもののなかにも、思い違いなどいくらでもあるでしょう。関係者の皆さんに不快な思いをかけていることもあるかもしれません。あらかじめお詫びしておきます。しかし、いま持っているものでやるしかないので、ご勘弁ねがいますね。

本当は、僕自身が楽しむだけでなく、地域サッカーの魅力や価値をもっと理解して、「すでにわかっている人たち」ではなく、その外にいる「普通の人たち」に向けて、ひろく発信していけるようなことができればいいと思っていました。このサイトや関連するツイートを見かけて、あたらしく地域サッカーに興味を持ってくれた人がひとりでもいてくれたらいいのですが。地域CLを題材にしたフリーペーパーもつくりたかったけど、これは今年は断念。来年への持ち越しとします。

なにはともあれ、今回の地域CLに参加されたすべてのチームの選手と関係者、そしてサポの皆さんに(現地組もそうでない人も)最大限の敬意と感謝、そしてお疲れ様を!

今年の地域CLはこれで終わり。年内にかけては、サイト内の情報をいろいろ整理していきます。

それでは皆さん、またどこかの試合会場でお会いしましょう!

紹介 @regionalfootbal

このサイト「地域CLを知る」を運営しています。

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