全社2017観戦記(5日目、最終日)

みなさんこんばんは。@regionalfootbalです。

第53回全国社会人サッカー選手権大会(「全社」)も、大会最終日の5日目を迎えました。

ついにここまでたどり着きました。試合会場は昨日と同じくテクノポート福井スタジアムです。

さあ、行きましょう。

3位決定戦(10:00K.O.)

  • FC TIAMO枚方対VONDS市原FC

試合開始してみると、昨日の試合と同じように、市原はやや受け目のように感じました。そのせいでか、枚方がこちらは昨日と違ってボールを持てるような状況です。

そして前半早々に枚方がCKから先制!その後も、先制したこともあってかボールを持って仕掛ける枚方。前半最後の方にあった、市原陣内でのピッチを広く使ったワンタッチを含むボール回しは、見ていて笑いがこみ上げるほどでした。こりゃすごい、と。

対する市原もシュートシーンは何度かあるのですがそれがことごとく枠外へ。大事に行き過ぎているのか、連戦の疲れから踏ん張りが効かなくなっているのか…シュートした選手が天を仰ぐシーンが続きました。

しかし後半開始の3枚替え(含むレナチーニョ)から、ゲームの主導権は市原へ。シュートシーンを重ねるも、枠外にはずれるか、枚方の選手が体を張って止めて凌ぎます。そして、あるシュートを枚方GKがビッグセーブで弾いたボールを押し込んで市原がとうとう同点に!

その後は、市原の攻撃力が爆発したのか、枚方の選手の集中が切れてしまったか、市原がゴールを重ねていきます。

結果、1-4となって試合終了。市原がサウルコス福井戦に続く逆転勝利を飾りました。

枚方としては、昨日の5-0、今日の4-1と、2日連続で大量失点となってしまいました。対戦相手が、鈴鹿そして市原と強豪揃いだったこともありますが、やはり、昨日のデータで見たような、スタメンの固定からくる疲労が最後まで響いた面もあったのではないかな、と思います。

この試合の結果、VONDS市原が大会3位、FC TIAMO枚方が4位となりました。

決勝戦(12:30K.O.)

  • 鈴鹿アンリミテッドFC対松江シティFC

昼を過ぎると、雲が広がって気温が下がってきました。

昨日の観戦記4日目で、僕は下のように書きました。

今日の会場は、外野の目から見れば、雰囲気はやはりちょっとゆるかったかな、と思います。

今日は「全社の4日目」というよりも「全社枠決定済、からのエキストラステージ1日目」という感じでした。

会場全体の雰囲気については、その印象は正直今日も変わってはいなかったかと思います。

しかし、決勝戦のピッチの上は、違いました。決してエキストラステージなどではありませんでした。

試合開始。松江シティは、まさかとは思っていまいたが、今日も中盤での速い寄せを見せます。あくまで自分たちの強みを出す覚悟のようです。そして、鈴鹿の選手もそれを受けて立ちます。

先制は鈴鹿。中盤で奪ったボールを前につけて、そのまま持ち上がってPA角あたりからゴールの逆サイドへシュートを叩き込みました。

その後もボールを握るのは鈴鹿のほうが多かったように思います。鈴鹿の選手は体格も大柄で、(若干荒削りな部分も見られますが)総じて技術も備わっているように見え、選手層も厚く(準決勝で結構選手を入れ替えてましたよね?)大会を通じて「強いチーム」という印象を受けており、今日もそのとおりのプレーを見せてくれます。

しかし、松江も負けてはいません。前半最初のCKの際にいきなり意表をついてグラウンダーのパスを中央マイナスに通してゴール上部枠内ぎりぎりあたりにダイレクトでミドルシュート、これを鈴鹿GKが間一髪弾く!という、ここ一番でのお互いの高いプレー精度。これには会場から歓声が上がりました。

その後もボールを持つのは鈴鹿ですが、松江も前線から中盤にかけての寄せの速さで対抗し、相手の好きなようにはさせまいとする感じ。そして奪ったら39番、9番あたりが鈴鹿DF裏を狙います。球際のあたりも強いので、選手が倒れ込むこともしばしば。

得点が入らないままジリジリと時間が過ぎ、緊迫感の高い、いわゆる「かたい試合」といった印象のままで前半を終えます。

たぶん、現場で観ていた方も、有明放送局でライブ中継を観ていた方も、以下のように感じられた方が多かったかもしれません。

「…5連戦の最後の試合とは思えない」

後半に入って、早目の時間帯に松江が追いつきます。これで1-1。

その後も中盤での奪い合いが続きます。時おり鈴鹿がゴール近くまで運びますがシュートが枠に行ってくれません。

後半30分頃に、鈴鹿のPA付近で鈴鹿DFがボール持った際に、松江の選手が4人くらいダッシュで寄せていった場面に、メイン側の観客からちょっとどよめきがおきました。「この時間帯にそこまでやるか…!」といった感じでしょうか。松江の選手たちの、鬼気迫るという感じの迫力を感じたシーンでした。

それから互いのゴール前に迫るシーンが何度かあっても決まらず、AT3分の表示がされてあたりから、鈴鹿サポさんたちの叫びのような声が一層大きく聞こえるようになりました。
「アーンリミテッ!(ドンドンドドドン)、アーンリミテッ!(ドンドンドドドン)」

そこからしばらく経ち、たぶんこれがラストプレーかなという鈴鹿のCK。ボールが入ってゴール前でごちゃっとなった時に、鈴鹿の選手がゴールにボールを押し込んだ、ように見えました。笛は聞こえない。しかし、バックスタンド側の副審がフラッグを降ろしてセンターラインの方へ走り出しました。

判定はゴール! 松江の選手たちは主審に抗議しますが、判定は覆りません。

その後の松江側のボールで試合再開直後に、長い笛が吹かれました。試合終了。

鈴鹿アンリミテッド、優勝!

決勝戦80分の、そして5日間を通しての長い、ながい戦いにようやく終止符が打たれました。

下は、公式試合中の怒涛の連投ツイートで有名な鈴鹿アンリミテッドの公式ツイッターアカウントさん。

そして、敗れた松江シティの公式ツイッターアカウントさん。

このように、試合の明暗は、確かに別れました。ですが、試合内容を見れば、今回の勝者と敗者は紙一重だったかと思います。先ほども書きましたが、この試合は(本来はいわきFCを中継するはずだった)有明放送局さんが中継をされていて、アーカイブもされる模様です。もし未見の方がいらっしゃいましたら、お時間をつくって、ぜひ観てみてください。

有明放送局さん、この試合を中継+アーカイブしてくれてありがとうございます。とても価値あるアーカイブになると思います。鈴鹿アンリミテッドの関係者の皆さんにとっては歓喜の全社初優勝の、そして松江シティにとっては、地域CLでのリベンジを誓うための、記録として。

そして、この試合のすぐ後に、表彰式と閉会式が行われました。優勝した鈴鹿の選手たちにメダルを授与してくれたのは、来年の福井国体の公式マスコットの…

「はぴりゅう」くんでした。

試合の最後は、やっぱりゴール裏のこの一枚で。

優勝した相手チームのサポさんたちの前に並んだ松江シティの選手たちの今大会の結果は準優勝、そして地域CLへの出場権を獲得、ということとなりました。

両チームの皆さん、5連戦というスケジュールの最後の試合で、最高の姿をみせてくれてありがとうございました! 最終日まで残ってこの試合を見届けて、本当に良かったです。

最終成績

  • 優勝:鈴鹿アンリミテッドFC
  • 準優勝:松江シティFC
  • 3位:VONDS市原FC
  • 4位:FC TIAMO枚方

そして連日更新してきたトーナメント表も貼っておきます。

感想:旅の終わりに

以下、少し大会全体を通しての感想的なことを書いてみます。もう少しだけお付き合いください。

僕は以前、地域サッカー界隈で有名なコミュサカブログさんの記事「【全社】「Sparkle of individuality」全社愛媛大会を振り返る」を読んでいました。なので、福井に来る前に、全社とはどれほど精神的に苦しい大会なのか、と若干恐れていたところがありました。

一方で、「魂が震える?そんなものはJ1昇格プレーオフ3年連続3連敗だけで十分だ(by千葉サポ)」とも思っていました。そして、自分はそうはならないだろうな、という予感もありました。

なぜなら、僕は最初からこの全社の傍観者だったからです。

もし、僕がこの全社の32チームのうちのひとつのサポで、そのために福井までくるようなガチサポだったならば、多分こんな観戦記を毎晩書くような余裕はなかったでしょう。コミュサカさんのブログ記事のように、心が擦り切れていってしまったかと思います(一応、地域リーグ界隈では東京23FCを応援しているので、2日目にPK負けの瞬間を見た直後は悔しかったですが。。。)

そうならない代わりに僕は傍観者として、大会を通して一日ごとに異なることを感じることができた大会でした。

1日目は、初めて見るたくさんの個性的なチームと地元福井の人たちの盛り上がりから祝祭感を感じました。
2日目は、暗く寒い曇天の下で関西王者の意地といわきFCの落胆とを見ました。
3日目は、己のスタイルを貫いた松江シティの歓喜と敗れ去るサポさんたちの叫びを聞きました。
4日目は、青い空の下での一時休戦、PKで破れはしたものの市原の強さの源を垣間見ました。

そして今日5日目。印象的な2チームによる、最高の決勝戦を観ました。サッカーに、観なくてもいい試合などひとつもないのではないか、と改めて教えられました。

ちっとも苦しくなく、楽しい旅でした。それこそが傍観者の特権でありまた、傍観者ゆえの限界なのでしょう。

ちょっと規模は違うけれど、まるで自国の代表がでていないワールドカップに来ているような感じ、といったら良く言い過ぎでしょうか。

この5日間は、僕にとってとても長かった5日間でした。観戦記0日目を書いたのなんて、もうはるか昔のように思えます。

今回、各チームの試合の前後でサポさんたちの写真を数多く撮ってきましたが、そのチームの勝敗の行方に心を寄せられるのは、やはりそのチームのサポさんたちだけだと思うので、部外者でありまた傍観者として、撮影時はあまり出しゃばらずにしてきたつもりです。皆さんにご迷惑をおかけしていなければいいのですが。

この「地域CLを知る」というサイトを今年6月に公開し、これまで毎週末ごとに各地の地域リーグの結果をグラフ化してきました。そこでは、僕にとってそれぞれのチームは、チーム名と勝ち点数、SNS上で見かける数名の関係者・サポさんたち。ただそれだけの存在でした。

それが、今回の全社本大会に来て、そうしたチームたちが、血肉を持って目の前に現れてくれました。

期待していたものが見られなかったチームもありますし(それはこちらの勝手な期待なのですが)、そもそも別会場だったので見てすらいないチームもあります。しかし、期待以上、あるいは予想もしていなかったような場面にも数多く出会えました。

3日目の夜に、地域CL出場全12チームのリストを以下のようにツイートしました。

その時に、僕はこれまでとは違った感慨をもって、この12チームの顔ぶれを見ることができるようになっていました。

「また見られるのか、(もしくは)もう見られないのか」、と。

それが、ささやかですが、傍観者であった僕にとっての今回の旅の最大の収穫なのかもしれません。

そして最後に。現地で声をかけてくださった皆さん、支えてくれた相方と職場の同僚、今回の福井での大会運営に携わるすべての皆さん、僕のつたないツイートや観戦記を見て(RTやお気に入りもして)くれていた皆さん、勝手に励みにさせてもらっていました。ありがとうございました!

そして何より、今回の全社に参加されたすべてのチームの選手と関係者、そしてサポの皆さんに(現地組もそうでない人も)最大限の敬意と感謝、そしてお疲れ様を!

福井は、いいところでした。

今回の旅はこれで終わり、また新しい旅が来月に待っています。

それでは皆さん、11月の地域CLでお会いしましょう!

紹介 @regionalfootbal

このサイト「地域CLを知る」を運営しています。

1件のコメント

  1. 全社2017観戦記を読みました。さながら自分も観戦したような気分になりました。出場時間のグラフやトーナメント表など欲しいデータが適切にありとても素晴らしいレポートでした。
    機会があれば行って見たい気分になりました。
    ありがとうございました。

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